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避難指示解除に関する町民の皆さまへのメッセージ

浪江町民の皆さまへ

 本日、私は、「浪江町の一部の避難指示を3月31日に解除する」という国の提案に対し、容認することを皆さまにご報告いたします。

 浪江町は、復興計画第一次で「平成29年3月の避難指示解除」を目標として以来、復旧・復興の努力を続けてまいりました。その平成29年がついに到来し、1月18日に国から「避難指示解除準備区域」及び「居住制限区域」について3月31日に避難指示解除するとの提案がありました。その後、10回にわたる住民懇談会を開催し、町民の皆さまのご意見をいただいた上で、2月16日に国から改めて3月31日の解除が提案されました。これまで私は、こうした住民懇談会や準備宿泊者との懇談会をはじめ、様々な場所で町民の皆さまのご意見を頂戴してまいりました。一日も早く帰りたいというお声の一方で、解除されても町で生活できるのか、時期尚早ではないか等、いろいろなご意見がありました。私は、これらのお声をすべて正面から受け止め、冷静に熟慮してまいりました。

 そして、そうしたご心配・ご不安を払しょくする努力を、国・県とともに続けることを確認したうえで、浪江町を残すためには、今この時期に避難指示を解除することが必要だとの判断にいたったものであります。

 この6年間、私たち浪江町民が味わなければならなかった塗炭の苦しみを振り返ると、悲しみ、悔しさ、無念の思いがあふれ、言葉にすることもできません。耐えがたき避難生活を忍んでこられた町民の皆さまのご苦労を思うと、心が痛みます。

 ただ、その苦しみの中でも、私たち町民誰もが強く願ってきたことは、ふるさとを荒れたままにしておいてはいけない、浪江をなくしてはいけない、先人が営々と築いてきた豊かなふるさと浪江を、ぜひとも次世代へ引き継がなければならない、という願いであり、私は、その強い思いをひしひしと感じておりました。

 今般開催した住民懇談会出席者のアンケートでは、30.3%の方がすぐに、あるいはいずれ戻りたい、さらに21.3%の方が避難先と浪江町の二重の生活を考えているとお答えになりました。つまり、半数以上の方は、何らかの形で浪江町に足を運び続ける意思をお持ちだということです。これは、「ふるさと浪江をなくしてはならない」という皆さまの声であると、私は受け止めました。

 壊れたものを直す「復旧」の作業については、おかげさまで大方のめどがつきました。最低限の生活インフラもなんとか整備できつつあります。これからが本当の「町の復興」です。残念ながら、百パーセント元通りの町に戻すには、相当の時間を要すると思います。しかし、浪江の歴史・伝統・文化を大切にしつつ、新しい発想で産業を呼び込み、新たな町を創建していく、その覚悟で復興まちづくりに取り組めば、必ずや震災前よりもすばらしい浪江を甦らせることができると、私は信じております。 

 そのためにはまず、最低限のものがそろったこの段階で、帰れる人から町へ帰り、先駆者となって、官民協働で道を切り拓いていかなければなりません。この4月からは、私自身を含めて大半の町職員が本庁舎に戻り、町民の皆さまの生活ニーズを現場で把握し、即対応できる体制を整えて、皆さまとともに道なき道を歩んでいく所存であります。 

 今回、町の一部の避難指示解除を受け入れる判断に至った背景として、町民の皆さまを中心メンバーとする「フォローアップ会議」からのご報告があります。平成28年3月に「避難指示解除に関する有識者委員会」から、避難指示解除までに達成すべき項目として、除染の徹底やインフラ整備を中心とする16項目が示されましたが、その後、この「フォローアップ会議」において、これら16項目はおおむね達成しているとの報告をいただきました。 

 そこに含まれている、除染はもちろんインフラや生活環境の整備などは、これまでも国・県と折衝し、財政面でも実施体制面でも支援を得て、実現させてきました。しかし、真の復興に向けては、まだまだこれから取り組むべき課題も残されており、国・県など関係機関の支援継続が欠かせません。 

 そこで町は、これまでの幾多の要望活動の集大成ともいえる、「避難指示解除に向けた必要施策に関する要望書」を、1月12日、原子力災害対策本部長あてに提出いたしました。そして2月11日、この要望に対する回答が、原子力災害現地対策本部長から示され、今後の浪江町の復興に国・県として最大限支援することを約束した「浪江町の復興に向けたフォローアップの枠組み」が提示されました。 

 また、議員の皆さまから複数回にわたってお寄せいただいた、町の再生に向けたご意見についても、国や県に対して対応を要請したものであります。たとえば、今の浪江町の放射線量の状況では不安であり、追加被爆線量1ミリシーベルトを達成すべきではないか、という住民に寄り添ったご意見を度々いただきました。私は国に対し、1ミリシーベルト目標の達成まで、線量低減の取り組みを継続することを要請し、国の了解を得ました。また、町として除染検証委員会を継続し、作業のモニタリングを独自に行い、環境省等、国の機関に対し線量低減を強く要請する体制を整えました。 

 福島第一原子力発電所の廃炉作業の安全確保と情報公開の徹底についても、ご意見をいただきました。これについては、作業にあたっての安全確保は当然のこと、定期的な住民との意見交換会開催等、情報の見える化を徹底することを国に要請し、了解をえました。 

 さらに、国は、イノベーションコースト構想に代表される、新しい産業集積のための施策を打ち出していますが、これらの構想が地元事業者にとって意味のあるものとなるよう、事業者間のマッチングを進めてほしいという、要望もいただきました。地元復興の加速化に不可欠なこの要望についても、国に働きかけ、マッチングイベントの実施に向けて前向きに検討する旨の了解をえました。 

 国によるこれらの約束が履行されるよう、国、県、町の間で合意文書を取り交わします。もちろん、避難指示が解除されても、戻らないと判断された方また、すぐには帰れないという大勢の方々がいらっしゃいますので、その方々への支援措置も、国が一方的に打ち切ることのないよう、国と協議する枠組みも設置する予定です。 

 こうした一連の経緯を受けて、今のタイミングで「まちのこし」のためには、解除時期を先延ばしにすることなく、平成29年3月31日の一部避難指示解除を受け入れる判断にいたったものであります。 

 当然ながら、避難指示の解除はスタートラインに過ぎません。そして、町土の8割を占める帰還困難区域が残っている限り、帰町宣言をするつもりがないことは、これまで申し上げているとおりであります。一足先に復興の歩みを始めた地域が浪江町全体の復興をけん引しながら、帰還困難区域の再生の道筋を早期に描き、町土全体を「ふるさと」として取り戻す日を全力で目指してまいります。 

 議員の皆さま、町民の皆さまにおかれましては、この判断をなにとぞご理解いただき、「どこに住んでいても浪江町民」として、浪江町創建の歩みを一丸となって進めていくため、引き続きご協力賜りますよう心よりお願い申し上げます。

                                                   平成29年2月27日
                   
                                                        浪江町長 馬場 有


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