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【報道機関向け資料】福島県浪江町の現況~大震災と原発事故から4年…

(平成27年2月10日配信) 福島県浪江町は、平成23年3月の東日本大震災により、沿岸部の津波被災をはじめとする甚大な被害を受けました。続く東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染のため、発災からまもなく5年目を迎える今もなお、町内全域に避難指示が継続し、町民約2万人の広域分散避難が続いています。

平成24年10月に定めた「浪江町復興計画(第一次)」では、避難指示解除の時期を平成29年3月と想定しています。町はこれに基づき、町民の生活支援とともに帰町に向けた努力を進めてきました。平成25年末から復旧作業の前提となる「本格除染」が始まり、平成26年度、ようやく復旧・復興は目に見える形になりつつあります。この1年間を中心とした浪江町の復興の歩みをご紹介します。

1. すべての前提となる除染

浪江町は現在、(A)避難指示解除準備区域、(B)居住制限区域、(C)帰還困難区域の3区域に分かれています(平成25年4月に、それまでの警戒区域などの区分が見直されました)。

浪江町区域再編図

比較的放射線量の低い(A)(B)の区域は、国直轄の除染計画の対象となっており、平成25年11月から本格的な除染作業が始まりました。除染の対象区域内には34の行政区があり、現在そのうち1行政区で除染が終了、8行政区で作業が進行中です。また、町内を東西に走る幹線道路、国道114号線の除染は、平成26年12月までに全対象区間(28キロメートル)で完了しました。これら除染対象区域内では、12月末時点で宅地8%、農地11%、森林13%、道路17%の除染が完了しています。

現在の空間放射線量は、(A)区域にある浪江町役場周辺で毎時0.1マイクロシーベルト程度、常磐線浪江駅前付近では毎時0.7マイクロシーベルト程度です。避難指示解除の要件のひとつは、除染の徹底による放射線量の低減であり、十分に下がらないところは、年間の追加被ばく量1ミリシーベルト(毎時0.23マイクロシーベルト)を長期的な目標に、追加除染を国に求めていきます。また、現在国の本格除染の計画がない(C)帰還困難区域についても、引き続き除染を求めていきます。

2. 復旧の第一歩、災害廃棄物等の処理

東日本大震災で浪江町は、震度6強の揺れに続き、15メートルを超える津波に襲われ、約6平方キロメートルが浸水。約600棟が流失しました。この被害によって町内に残された災害廃棄物は、28.9万トンと推定されています。津波被災地の災害廃棄物は、町民の思い出の品などをていねいに選り分けながら選別作業を進め、被災家屋の解体廃棄物等とともに、新たに造成された災害廃棄物仮置場へ、平成26年10月から搬入を開始しました。12月末現在、全体の約18%にあたる5.1万トンの搬入が完了しています。

こうした災害廃棄物等のうち、可燃物を焼却して減容化するための「仮設焼却施設」が、平成26年10月に着工しました。沿岸北部(マリンパークなみえ敷地内)に建設中のこの施設は、今年7月に稼働を開始する予定で、平成29年4月末までに約16.3万トンの処理を完了することを目指しています。被災車両の撤去

また、町内に残されている被災船舶(62隻)と被災車両(1,051台)については、船舶が平成26年11月から、車両が同12月から、それぞれ所有者の同意がとれたものから解体・撤去が始まっています。

3. 活動を支える上下水道の復旧

上水道は、平成29年3月までに(津波被災地を除く地域の)すべての配水管の復旧完了を目指して作業を進めています。12月末現在の復旧率は約40%で、復旧地区内では消火栓も使用可能となっています。復旧完了までは、町内の2か所で給水を実施しています。なお、取水場の修繕はすでに完了しており、週3日実施している水源の水質検査では、放射性物質は検出されていません。

公共下水道は、平成26年6月に災害査定が一部終了し、工事に着手しています。浪江浄化センターは、平成27年度中の修繕完了を目指しています。下水道が使えるようになるまでの間、町内で事業者が浄化槽を設置する際の補助を行っています。

4. 地域の動脈、主要道路の開通

福島県浜通り(太平洋沿岸地域)を南北に走る国道6号線は、放射能汚染のため、浪江町から南側の双葉町から富岡町間約14キロの通行が制限されていました。これが平成26年9月に解除されたことにより、地域の物流や人の移動のしやすさが格段に向上しました。

浪江インターチェンジ開通さらに、同12月6日には常磐自動車道の浪江インターチェンジ(IC)が開通し、浪江から仙台まで高速道路がつながりました。浪江から仙台の所要時間は約80分と、国道6号線経由と比べると40分ほど短縮されました。残る浪江ICから常磐富岡IC間が今年3月1日に開通すれば、待望の常磐自動車道の全線開通が実現します。

なお、浪江ICの開通にあわせて、国道114号線の浪江IC以東、国道6号線までの通行も自由化されました。町内の交通量の増加に伴い、防犯カメラ増設、町独自のゲートやバリケード設置のほか、町民によるパトロールも開始(「浪江町防犯見守り隊」)するなど、防犯体制を強化しています。

5. 町内に戻りはじめた「人の活動」

浪江町役場とローソン被災前の浪江町内の事業者数は、約1,000を数えていました。一時そのすべてが営業中止に追い込まれましたが、これまでに多くの事業者が町内外で再起を図っています。町内での営業再開は、平成25年7月(製造業の日化ボード(株)、ガソリンスタンドの(株)叶屋)から少しずつ増え続け、現在15事業者(19事業所)となりました。平成26年8月に再開したローソン浪江町役場前店は、全域が避難指示区域となっている町村内では唯一のコンビニエンスストアです。

なお、平成26年11月からは、株式会社ヤマト運輸原町支店(南相馬市内)が、浪江町内での集配業務を再開しました。わずかずつではありますが、町内は「人の活動」をとり戻しつつあります。

6. 町の基盤、第一次産業の復活を目指して

被災前の浪江町では、コメが農業産出額の約4割を占めていました。平成26年は、町内の一部の農地で水稲の試験栽培を開始し、10月には大震災後初めての稲刈りを行うことができました。全量全袋の放射性物質検査の結果、すべて基準値(1キログラムあたり100ベクレル)より大幅に低い数値でした。この新米は、11月から環境省・東北農政局等の食堂で提供されたほか、生産に協力していただいた関係者等へ寄贈され、これまでに試食会などが開催されています。

また、風評被害を受けにくい花卉類の栽培も一部で再開し、8月には浪江産のトルコギキョウが初めて市場に出荷されました。

今後は、11月にとりまとめた「浪江町農業再生プログラム」に沿って、平成28年度末までに農地の保全・集約化や担い手の育成などを進めます。

復旧が進む請戸漁港浪江町の請戸(うけど)漁港は被災前、漁船約100隻が操業し、2,300トンを超える漁獲量がありました。平成28年3月までの完了を目指して進めている復旧作業は、当面は30隻程度の漁業規模を想定しています。

漁業者が所属する相馬双葉漁業協同組合では、魚種および漁場を限定した試験操業を行い、厳しい自主基準(1キログラムあたり50ベクレル)を設けて放射性物質の測定結果を公開しています。

7. くらしの再建は「住まい」の再建から

被災時の浪江町民約7,700世帯21,000人のうち、現在でも約3,800人が県内の仮設住宅で、約6,600人が借上げ住宅(みなし仮設)で暮らしています。不安定な住環境の改善のためには、復興公営住宅の整備が急務です。

浪江町は、多くの町民が滞在を希望する南相馬市・いわき市・二本松市を中心に、福島県および県内の他市町村とともに、合計約2,500戸(他町との共用を含む)の復興公営住宅の整備を進めています。完成済みは現在1%未満にとどまっていますが、昨年12月から、その一部で待望の入居が開始しました。来年度以降は、さらに多くの町民が安定した住まいに移ることができる見込みです。

また、県外避難を続ける町民約6,400人(現在、全国46都道府県の約500市町村に分散)の生活を支援するため、町は1府9県に「浪江町復興支援員」を配置し、個別訪問や交流会の開催などの活動を行っています。

8. 将来のまちの姿を具体的に描く

平成26年3月策定の「浪江町復興まちづくり計画」では、避難指示解除直後の町内の人口は2,500世帯5,000人と想定しています(町外と2地域居住する世帯を含む)。そのほか復旧・復興の仕事に携わる方々の滞在も見込みながら、町の復興の姿の具体化を進めています。

▽町で暮らすための第一歩、住まい

町内には津波で流失または地震で破損した家屋のほか、長期間人が住まないことによる損傷が激しい家屋も多いため、町民の住宅再建の支援とともに公営住宅の整備を計画しています。

具体的には、町内でも比較的放射線量の低い地域に、自力で自宅再建を希望する方向けの分譲地、および3種類の公営住宅を整備する予定です。(1)「災害公営住宅」は、津波で自宅を失った方、地震による損傷などで自宅に住めない状態の方向け、(2)「復興公営住宅」は、放射線量が高く避難指示が継続する区域に自宅がある方向けに整備します。さらに(3)「福島再生賃貸住宅」は、(1)(2)以外の町民の方、および生活関連サービスに従事する方など、新たに町内で居住を希望する方向けの住宅です。

これらの公営住宅は、避難指示の解除が想定される平成29年3月に向け、第一期として約350戸をめどに整備を進める計画です。

なお、津波被災者の生活再建のための「防災集団移転促進事業」(約600世帯対象)は、平成26年10月から移転元用地の買い取り、および自力で住宅再建する方向けの補助金等の受付を開始しました。これにあわせて、共同墓地の移転事業も進めています。

▽働く場・生活の場をつくる

上述のとおり、浪江町は、沿岸部および4-5キロメートルほど内陸の市街中心部にかけて放射線量が低い地域が広がっており、この地域を「町の復興拠点」としてまちづくりの具体化を進めています。すでに一部で営業・営農の再開の動きが始まっていますが、帰町に向けてこうした「営み」をさらに増やせるよう、多様な業種の事業開始・再開を働きかけています。同時に、町内での生活に必要な医療施設や各種サービスについても、その配置やサービスの担い手の確保方法について、具体的に検討を開始しました。

中期的な産業の創出については、「双葉郡北部の復興拠点を担う」との考え方のもと、国が進める「イノベーション・コースト構想」と融合するまちづくりを、以下4つを柱に進めます。

(1)   一次産業の再生(浪江町だからできる、放射性物質に関する検査・調査・研究)

(2)   学術研究都市の形成(被災地だからできる、記録資料の収集・保存、人材育成)

(3)   セメント、金属などの資材リサイクル拠点の設置(双葉郡全体の復興への寄与)

(4)   再生可能エネルギーを町外から集約・供給する蓄電エネルギー拠点の形成

復興まちづくり概念図

こうした産業再興のため、町内で営業を再開したり、新たに進出したりする企業に向けて思い切った税の減免などの優遇措置を整備するよう、国に対して強く求めていきます。

浪江町の避難指示が想定通り平成29年3月に解除できるかどうかは、除染をはじめとする一連の作業の進捗などに基づき、慎重に判断することになりますが、いつか再び町に「暮らし」をとり戻す日のために、一歩ずつ復興の歩みを進めていきます。

参考

▼福島県浪江町―東日本大震災後4年間の主なできごと(年表)

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