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新年度を迎え、吉田栄光町長に、現在の想いなどについてお聞きしました。
●令和5年3月31日特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されました。復興への取り組みについて教えてください。
ようやく津島、末森、室原地区が解除となりました。しかし、この解除はゴールではありません。私はスタートだと考えています。帰還困難区域の全域解除に向け、まずは、この地域の復興を実現しなければなりません。安心、安全な生活環境のため、警察や消防と連携して駐在所や消防屯所を整備しました。また、デマンドタクシーや移動販売の提供エリアも拡大しています。
津島地区は独自の文化や歴史があり、末森・大堀地区は伝統工芸の大堀相馬焼がある。そして室原地区は常磐自動車道のインターチェンジがある。3地区の特徴を活かして、民間が投資しやすい環境を整えていきたいと考えています。
●拠点区域外については、「2020年代には帰還を望むすべての住民が帰ることを目指し、必要な場所を除染する」と、国から方針が示されましたが、これからどのように取り組まれますか?
早く帰りたいという町民の方々の切実な声をしっかりと受け止めなければならない。先日、帰還に向けた意見交換会が開催され、皆さんが安心して生活するために必要な除染範囲についてご意見を伺いました。拠点区域外、白地と呼ばれる地域を、できるだけ時間をおかずに解除したいという思いを持っています。
また、たとえ町に戻らなくても故郷を思う気持ちに変わりありません。私は、そうした方々の気持ちも、しっかりと受け止めていきたいと思っています。
特に、津島地区は開拓で苦労された方々に、震災によってさらに大きなご苦労を負わせてしまいました。本当に心が痛い。津島の貴重な歴史、文化を後世に残していくのは自分の役割だと思っています。
●4月1日「福島国際研究教育機構(F-REI エフレイ)」が正式に設立され、「ふれあいセンターなみえ」に仮事務所が開所しました。F-REIとは、どんな施設ですか?
F-REIは、国が整備する世界的レベルの高度研究、教育の拠点で、浜通り地域はもとより、福島県、東北全体の復興をけん引するエンジンとなることを目指しています。昨年9月、川添地区に立地が決定し、現在、国や県と具体的な調整を進めているところです。日本の科学技術や産業競争力を高めるために「ロボット」「農林水産業」「エネルギー」「放射線科学・創薬医療」「原子力災害のデータ発信・集積」等の研究が行われます。2029年までを第一期中期計画期間として、今年度から施設の建設準備と並行して研究も順次進めていく予定だと聞いています。
●F-REIの立地によって、町にはどんな効果、影響がありますか?
F-REIには世界から多くの研究者が集まります。F-REIの研究成果が実用化され、この地域から新しい技術、新しい製品として世界に発信されていく。こうした経済活動が活発になれば、この地域の15年20年先の繁栄が見えてきますし、新たな企業もたくさん進出してくることでしょう。こうした浪江からはじまる波及効果によって、福島県だけでなく、東北地方、国全体が活性化していくことを期待しています。
さらに国内外の研究機関との連携によって、大学などの進出も期待できるので、地域の将来を担う子どもたちが世界レベルの新しい技術などに触れる機会に恵まれ、教育水準の向上が見込まれます。
私たちには立地町として、F-REIに集まる人々が安心して暮らせる町をつくるという責任を果たさなければならないと思っています。
●町は急速に変わっていますが、若い世代が帰還するためには、子育てしやすい環境が必要です。子育て環境これからどのように取り組まれますか?
今、浪江町では、15歳未満の子供が増えています。本当にうれしいことです。
この4月から、なみえ創成小学校38名、なみえ創成中学校23名合わせて61名になり、昨年から21名増えました。また、浪江にじいろこども園は、11名増えて43名が通園しています。
子供は町の宝ですから、子育てしやすい環境を整えるため様々な施策の検討を進めています。まず今年度は、保育士を増員しました。そして、丈六公園も遊具や樹木、歩道などの整備が完了しました。町内には、子どもたちが元気に、無料で遊べる施設が増えていますので、ポケモン公園、ふれあい元気パークとともに、ご家族で遊びに来て欲しいです。
●最後に町民の皆さんへメッセージをお願いします。
先日いただいた“町長への手紙”に「年々年をとってきた。町民の福祉や健康増進についてもっと大切にして欲しい。」というものがありました。帰還困難区域の問題やF-REIだけではないですよという意味だと思います。令和5年度は、これまでコロナの影響で中断されていたものも含め、様々な健康増進事業を予定しています。
町民の皆さんには、いつも健康で長生きしていただきたいので、積極的に参加をお願いします。
町長に就任して半年がたちました。先人が築かれた浪江町を、間違いなく取り戻していくんだという大きな責任を感じています。
すべての町民の方々のために、これからも頑張ります。